医療はいま、「病気になってから治す」時代から、「病気になる前に予兆を捉えて対策する」予防医療の時代へと大きく変わりつつあります。
日本人の死因として最も多い「がん」においても、早期に発見できるかどうかがその後の安心感を大きく左右します。今回は、一滴の血液などから微細な変化を検知する「液状バイオプシー(microRNA・ctDNA)」と、身体にやさしく全身をスキャンできるMRI技術「DWIBS(ドゥイブス)」について分かりやすく解説します。
この2つを組み合わせることで実現する、新時代の健康チェックの魅力を見ていきましょう。

1. これまでの「がん検診」で感じていた不安や負担
従来の代表的ながん検診には、胃カメラや大腸カメラ、胸部CT、乳房マンモグラフィ、超音波(エコー)検査などがあります。これらは確実性の高い診断法として、これまでも多くのがん早期発見に貢献してきました。
しかし、受診する側にとっては少なからず心理的・身体的な負担があったのも事実です。カメラを挿入する際や検査前処置のつらさ、マンモグラフィの圧迫感といった「身体的な痛み・違和感」に加え、CT検査などを繰り返すことによる「放射線被ばく」を心配する声も聞かれます。
また、画像検査で腫瘍(カタチ)として確認できるようになるには、ある程度の大きさ(およそ5mm〜1cm以上)に成長している必要があります。そのため、現在の予防医療では「痛みがなく、被ばくもしないこと」、そして「目に見える前の段階で小さな変化を見逃さないこと」の両立が求められています。

2. 血液一滴から身体のサインを感じ取る「液状バイオプシー」
こうした課題に応える形で登場したのが、血液や尿などを採取するだけで体内の様子を調べる「液状バイオプシー(Liquid Biopsy)」です。従来の腫瘍マーカーよりもはるかに早い段階で、細胞の変化を感知できる新しいアプローチとして注目を集めています。
microRNA(マイクロRNA)が教えてくれる身体のシグナル
「microRNA」は、細胞内で遺伝子の働きを調整しているごく小さな物質です。がん細胞は、自身の成長や周囲との情報交換のために、特定パターンのmicroRNAをカプセル(エクソソーム)に包んで血液中に放出することが分かっています。
健康な状態とがん細胞が存在する状態では、血液中に分泌されるmicroRNAの種類や量に違いが生じます。この微小なバランスを解析・AI判定することで、「体内にがんのリスクが潜んでいないか」を目に見える腫瘍になる前の段階で捉えることが可能になってきました。
たった一度の採血で広くリスクをチェック
さらに、細胞の入れ替わりに伴って血液中に漏れ出す「がん由来のDNA(ctDNA)」を調べる技術も日々進化しています。液状バイオプシーの最大の魅力は、「一度の採血で、全身の微細なリスクサインを捉えられる」という手軽さと、身体へのやさしさにあります。
液状バイオプシー(分子・機能検査)のポイント
【メリット】 採血などの簡単な検査で済み、身体的な痛みや負担がほとんどない。画像に映る前の微細な変化を察知できる。
【課題】 「リスクの有無」は把握できるものの、「身体のどこに病変があるか」の位置特定には画像検査との連携が必要。

3. 痛くなく全身をチェックできる画像検査「DWIBS(ドゥイブス)」
分子レベルで「リスクのサイン」を察知した際、次に重要となるのが「実際に身体のどこに変化が起きているか」を視覚的に特定することです。全身の画像検査としてはPET-CTが広く知られていますが、放射性薬剤の注射や被ばく、事前の厳しい食事制限などがハードルとなる場合もありました。
この課題をクリアしたのが、全身MRI技術を活用した「DWIBS(ドゥイブス)」という撮影方法です。
DWIBS(ドゥイブス)の大きな特徴
DWIBSは、強力な磁気を利用して体内の水分子の動きを画像化します。がん組織は密度が高く水分子が動きにくいため、その特性を利用して病変部をクッキリと際立たせて描出します。
| チェックポイント | DWIBS(全身MRI) | PET-CT検査 |
|---|---|---|
| 放射線被ばく | なし(磁気を使用) | あり(薬剤+CT被ばく) |
| 注射・薬剤投与 | 原則なし(無造影) | あり(検査薬を注射) |
| 検査前の食事制限 | なし(血糖値の影響を受けない) | 厳格な食事・糖質制限が必要 |
| 得意な部位 | 脳・前立腺・腎臓なども鮮明に撮影可能 | 糖代謝の活発な部位のチェックが得意 |
DWIBSは放射線を使用しないため、繰り返し受診しても被ばくの心配がありません。注射や厳しい食事制限もなく、リラックスした状態で短時間で全身のチェックを受けられるのが大きなメリットです。
4. 「血液検査(分子)」×「DWIBS(画像)」の理想的な組み合わせ
これからの予防医療において重要なのは、どちらか一方に頼るのではなく、「2つの検査の強みをスマートに組み合わせること」です。
役割分担で見落としと無駄な不安を解消する
血液検査(液状バイオプシー)は、例えるなら「火災報知器のベル」です。目に見えない初期段階で「体内で何か変化が起きていないか」をいち早く察知します。
一方で、DWIBSをはじめとする画像検査は「出火場所を照らし出すライト」の役割を果たします。ベルが鳴った際や、定期的なスクリーニングとして全体をスキャンし、「どこにどんな状態のものがあるか」を明確に可視化します。
おすすめのヘルスチェック・ステップ
ステップ1:血液でリスクを定期チェック(液状バイオプシー)
定期的な採血でmicroRNAなどを調べ、体内の分子レベルの変化を日常的に見守ります。
ステップ2:DWIBSで全身の形状を確認(画像検査)
被ばくのないDWIBS等で全身を撮影し、気になる箇所の有無を正確に把握します。
ステップ3:必要に応じた早期アプローチ
万が一何か見つかった場合でも、負担の少ないごく初期の段階で適切なケアを行うことができます。
この2つを掛け合わせることで、見落としリスクを減らしながら、過度な不安や不要な再検査を減らした、非常に効率的で安心感のある健康管理が実現します。
5. 自分の健康を「戦略的」にデザインする時代へ
これまで健康診断というと、「病気がないかを探すための作業」というイメージを持たれていた方も多いかもしれません。しかし、日々アクティブに活躍される方々にとって、健康の維持・増進は「将来のパフォーマンスを高め続けるための大切な投資」です。
痛いやつらい思いをすることなく、身体への負担を最小限に抑えながら、最新の医療技術で自身のデータを知る──。「血液検査×DWIBS」というアプローチは、病気への不安を和らげ、より豊かで活き活きとした未来をデザインするための心強い味方となってくれます。
AGELESSでは今後も、みなさまがご自身に合ったウェルネスなライフスタイルを選択できるよう、最新の医療・予防情報を分かりやすくお届けしてまいります。
最後に
従来の「検診=苦痛や負担を伴うもの」というイメージは、医療技術の進化とともに大きく変わり始めています。今回ご紹介したmicroRNA等の血液解析と、被ばくのないDWIBSの組み合わせは、まさに「身体にやさしい予防医療」の象徴的な形です。「不調を感じてから対策する」のではなく、「日頃からスマートに自身のコンディションを把握しておく」。そんな新しいヘルスケアの習慣を、ぜひみなさまの選択肢に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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